セクシー・ピー。 ピーちゃん。 ありがとうな。
彼女がウチに来たとき、先輩ネコが2匹いた。
その後、後輩ネコが2匹入ってきた。 彼女は そのすべてのネコたちの最期を見届けた。 そしてついに 自分も天に昇っていった。 出会ってまもなく死にかけた「元、野良猫」は、力強く再生し、 「我が家の女王様」として23年間君臨し、大往生した。 --- 23年前、日野の高幡不動の小さなワンルームマンションの1階。 ヤツは突然訪れた。仲間とともに。 三毛ネコと、それよりも少し小さなキジネコ(つーのかな?)のコンビ。 そのふたりが「うりゃー!」とばかりに網戸にへばりついていた。 「うりゃー! 入れろー!」 って感じかな? そのとき、ウチにはネコが2匹いた。 大家さんにもダマッて飼ってるネコ。 「イヤイヤ。おまえさんたちをウチに入れるわけにゃいかんのだよ。 死なない程度に見守ってあげるが、それ以上の面倒はみられないよ。勘弁してね。」 名前をつけたら情が移ってしまうので、 三毛ネコのほうを「ミケ」、キジネコのほうを「チビ」と表現して、気に留めていた。 ところがある日、チビが死んでしまった。 原因はわからないのだが、動かなくなっているチビを近所の人が取り囲んでいた。 かわいそうに・・・と連れて帰り、ウチのベランダに埋めてあげた。 相棒が居なくなってしまったミケ。 ・・・仕方なくウチに入れてあげることにした。 最初はもらい手が見つかったら委ねることにしようと思っていた。 名前をつけないでおこう。情が移るから。 が、もらい手を捜すってのもどうすりゃいいかわからない。 自分も世慣れてないころだし。 うううむ。・・・面倒をみる!と腹を決めた。 「命名 ミケランジェロ」 と、紙に書いた。 メスネコだとは知っていた。 「ミケランジェロ」といえば、逞しい筋肉美の人間を表現した芸術家。という印象。 その本人は男性。 そりゃ、わかっていたのだが。。。 その作風をわかっていたからこそ、「強く生きろ!」という思いをこめて。 だって、ヒョロヒョロで頼りなく見えたからなぁ。あのころは。 が、さすがに長く呼びにくい。 最初は「ミケ」とか「ランジェロ」とか呼んでいたが、そのうちに「ピー」になった。 「まったくコイツは、ピーピーうるさいな!」 愛称:ピー (本名:ミケランジェロ) ・・・ということで。 元気なようなので、避妊手術を施すことにした。 もうこれ以上、ネコは飼えん。かわいそうだが手術して、ちょっと泊まってこい。 引き取りの時間を確認しようと連絡したら、 「術後、何も食べないんですよ。もう1日様子をみます。」 もともと野良だからなかぁ、栄養状態が悪かったせいかなぁ。 それからしばらくも、 「何も食べずに衰弱した状態です。もうちょっと点滴したほうがよいです。」 一週間もそんな状態が続いた・・・ 強引に連れ戻すことにした。 コイツはもともと野良だ。 すまんことをしたのかも知れないが、動物病院という特殊な場所に入れられ、 怖がっているだろう。 死ぬならウチで死んだほうがいい。チビと同じように。 「全然食べない。このまま連れて行ったら死んでしまいますよ」 という医者の言葉を無視して連れて帰った。。 やせ細ったピーがウチに帰った。 死んでしまうのなら、少しでも食いたいものを食わせたい。 人間が食うものは塩分が強いのでよくない、とされているが、これはどうだ? と、竹輪を少しちぎってあげてみた。 あ、、、 食った。 小さくちぎってあげた竹輪を、ピーは次々と(うまそうに)食った。 たちまちピーは元気になった。 「すぐに死んじまう? バカ言うな! オマエんとこ(病院)のメシがまずいんだよ!」 ・・・ってことだったのか?ピー? もしもこのとき、医者の言う通りすぐに死んでしまったら、 「野生の猫に余計なことをしてしまった。」 と後悔しただろうな。 快復したピーは走り回った。 カーテンをよじ登り、 掴めるものはすべて掴み、 蹴り上げられるものはすべて蹴り上げ、 ぐらいの勢いで。 上空に飛び立った子ネコがナカナカ戻ってこない。という感じ。 ネコジャラシをグルグル回して遊ぶと、普通のネコなら、 バタバタバタ バタバタバタバタ! だが、ピーの場合は違う。 ガガガガガガガガガガガガガガガガ こっちが怖くなるような殺気。 なんとかネコジャラシくんを救出した後も、ピーは目を見開いて気合じゅうぶん。 「あんにゃろ! いつか仕留めてやる!」 「・・・エライもんをウチに入れちまったなぁ」という印象だったな。 ピーは体が非常に柔らかかった。他のネコとは全然違う柔軟性。 いかようにでも折りたためる?って感じ。 あの柔らかさも、すさまじいスピード、ジャンプ力の源だったのだろう。 また、毛並みもまた柔らかく、きれいだった。 ツン、とすまして堂々と歩く小柄な姿は「女王様」だった。 それで「セクシー・ピー」っていう曲を作ったんだよな。 死にかけたときにはどうなるかと思ったが、ピーはすくすくと成長してくれた。 が、成ネコになったピーは、腹をなめることが多くなった。 異常に腹を舐め、そのうち腹から血が出てきた。穴が開いた。 「うわ! ピー! だいじょうぶか??」 腹から出てきたのは、糸を結んだ小さな輪。 「あ・・・ これは・・・ 避妊手術のとき、縫った糸だ。」 自然に溶けるって言ってなかったっけ。。。 病院に連れて行き、洗浄してもらうと、いくつもいくつも出てきた。 かわいそうに・・・というよりは、「こいつ、やっぱ すげえ」という印象。 「なんだぁ!? 邪魔なもんが腹に残ってるぞぉ? 出しちまえ。」 と、腹を破って出しちまった。 すげえネコだ。野生児だ! そんな「すげぇネコ」だからさ。 ピーの話を書いてたらキリがない。 ずっと甲状腺亢進症の薬を与えてたのも、 「この子は常にアクセル全開状態です。少し落ち着かせたほうが、長く健康に居られる。」 という医者の言葉に納得したから。 今年の2月になってから、もう歩けなくなってしまった、時間の問題だ・・・ となっても、ちょっと目を離すとヨタヨタ歩いてたり。 もしかしたら、本当に化け猫なんじゃないかと思った。 そしてそれを望んでいた。 「そのうちよくなって、飯も自分でバリバリ食うようになるのでは???」 しかし、化け猫ではなかったね。ピーちゃん。失礼しました。 でも、「スーパーキャット」「女王様」の称号はピーちゃんのものだぞ。 最期のとき。それは急に訪れた。 地震の影響で仕事は自宅待機。本当によかった。最期を看取ってあげることができた。 この強い命が終りを迎えるとき、外では北風が吹き荒れていた。 ピーが最期の呼吸を終えた。 「ピー! ピー!」 と呼びかけた。 それはもう、 「しっかりしろ! 戻ってきてくれ!」 という呼びかけじゃなかった。もうこれ以上無理しなくていんだよ。 薄れていく意識の中で、この言葉が聞こえているのならば。 聞こえているならば、伝えたい。 強い、勇敢な生きざまを見せてくれたことへの感謝。 23年間、楽しい生活を一緒に送ることができたことへの感謝。 そんな思いをこめて、旅立つ女王様へ呼びかけた。 「ピー。 ありがとうな。 ありがとうな。」 にほんブログ村
by hyustart
| 2011-03-21 07:46
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